2021年08月18日

アルバート坊やの実験は恐怖条件づけのエビデンスとしては弱い

ワトソンら(Watson & Rayner, 1920)はいわゆる「アルバート坊や」の実験を行いました。アルバートという名前だとされている生後11ヶ月の乳児に白ネズミと大きな音を対呈示する手続きを繰り返すと、最初は怖がっていなかった白ネズミに対しても恐怖反応を示すようになったという心理学では有名な実験です。さらには、白ネズミだけでなく、ウサギや毛皮のコートなど、白ネズミと似た特徴を持つ動物や物に対しても恐怖反応を示すようになったとされています。つまり、アルバート坊やの実験は、恐怖条件づけと般化がヒトの赤ちゃんで成立することを例示した実験だとされています。

このように、ワトソンらが行ったアルバート坊やの実験は、恐怖反応の発生に古典的条件づけが関与することを示すエビデンスだとされています。ですが、批判もあって、ワトソンらの実験には欠陥があって、実際には恐怖条件づけなんかまったく起こっていないか、たとえ起こっていたとしてもほんの僅かだっただろうという人もいます。

これらの批判は、主にアルバート坊やの実験に関する公刊済みの報告に基づくものです。なので、今回取り上げる論文はWatson(1923)のアルバート坊やの実験の様子を記録した映像を詳細に解析することで、いったいぜんたいこの実験が示す条件づけのエビデンスの強さはどの程度なのか?という点を検証することを目的としています。

Powell, R. A., & Schmaltz, R. M. (2021). Did Little Albert actually acquire a conditioned fear of furry animals? What the film evidence tells us. History of Psychology, 24(2), 164–181. doi: 10.1037/hop0000176

カナダのマキュアン大学社会科学科&心理学科の研究者2名による共著論文です。

さて、行動主義心理学者のワトソンと大学院生のレイナー助手がアルバート坊やに行った条件づけの手続きは有効だったのでしょうか?否、ほとんど有効でなかったというのが、本論文の主張です。アルバート坊やが映像で見せている相対的に弱い苦痛の兆候は、実際には鋭敏化や成熟の影響といった要因で説明できるというのです。

論文著者は、Watson(1923)の映像を恐怖条件づけを実証した証拠として妥当なものだと観る傾向は、期待効果の結果の可能性があると論じています。場合によっては、行動主義を非人間的で、操作的なものだとして信頼しないことも、アルバート坊やの実験動画を恐怖条件づけの証拠として考えることにつながっていると主張しています。

さらに、論文著者によれば、ワトソンは映像を編集して、アルバート坊やの反応を誇張し、プロパガンダに使ったそうです。それも、研究資金を多く集められるようにプロモーションとして、アルバート坊やの動画を利用したというのです。

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posted by マーキュリー2世 at 22:00 | Comment(0) | 認知心理学、認知神経科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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