2018年04月08日

青い病院パジャマは大うつ病エピソード患者の重篤度を重く感じさせる


青い病院パジャマ(患者衣)を大うつ病エピソード患者が着用していると、精神科医は患者をより重篤だと評定する、という研究があります(患者衣着用は患者自身の抑うつ評定に影響しませんでした)。このことを論文著者は、患者衣症候群/青いパジャマ症候群(blue pyjama syndrome)と名付けました。医者の白衣を見ると血圧が上がる白衣症候群(白衣高血圧)をもじっているのかもしれません。

以下、パジャマと表記しますが、これは日常生活で着るパジャマのことではなく、病院で患者さんが着る青いパジャマのことです。

Delmas, H., Batail, J-M., Falissard, B., Robert, G., Rangé, M., Brousse, S., Soulabaille, J., Drapier, D., & Naudet, F. (2017). A randomised cross-over study assessing the “blue pyjama syndrome” in major depressive episode. Scientific Reports, 7:2629. doi:10.1038/s41598-017-02411-x.

フランスのギュイヨーム・レニエ病院センター大学精神医学科、レンヌ第一大学レンヌ大学病院センター行動大脳基底核研究ユニット(EA 4712)&臨床調査センター仏国国立保健医学研究所(Institut national de la santé et de la recherche médicale,INSERM)レンヌ多岐臨床調査センター(plurithematic clinical investigation center of Rennes,CIC-P 1414)、ヴェルサイユ・サン・カンタン・アン・イヴリーヌ大学パリサクレー大学連盟パリ第11大学疫学健康研究センター(Centre de recherche en épidémiologie et santé des populations,CESP)、アメリカのスタンフォード大学医学部スタンフォードメタ研究イノベーションセンター(METRICS)の研究者による論文です。

気分障害で研究当時入院中の大うつ病エピソード患者26名のデータが有効でした。患者の性別は女性18名(69%)、平均年齢は51歳(SD = 13)。大うつ病エピソード期間は平均で25カ月(SD = 29)、大うつ病性障害(単一エピソード)が7名(27%)、大うつ病性障害(反復エピソード)が13名(50%)、双極性障害が6人(23%)、自殺企図歴ありが13名(50%)。以前の入院でパジャマ使用歴のあった患者は25名中6名(24%)。入院時の使用薬は抗うつ薬が21名(81%)、気分安定薬が10名(38%)、抗精神病薬が10名(38%)、鎮静系抗精神病薬が6名(23%)。入院中に治療を変えたのが6名(23%)で、抗うつ薬のInstatement(開始?)が3名(12%)、抗うつ薬の除去が2名(8%)、抗精神病薬のInstatement(開始?)が1名(4%)、抗精神病薬の除去が3名(12%)、反復経頭蓋磁気刺激法(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation,rTMS)が4名(15%)、電気けいれん療法が1名(4%)。

患者をランダムに次の2群に割り当て(1日目と5日目で基本的な評定手続きは同じ)。

・1日目に評定された時の服装がパジャマ姿で、5日目の評定時の服装が普段着
・1日目に評定された時の服装が普段着で、5日目の評定時の服装がパジャマ姿

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*論文のFigure 1より転載

1日目と5日目の評定手続きで、標準化面接5分間のビデオ映像を記録。ビデオ記録映像の標準化面接の面接官はすべて同一人物でした。

大うつ病エピソード患者以外に精神科医10名(女性5名,平均年齢43歳,年齢のSDは9)が研究に協力。担当患者の評定を避ける等の配慮を実施。精神科医1人につきビデオを10〜11本視聴し、映っている患者を評定。精神科医へのビデオの割り当てはランダマイズ。ただし、ビデオ映像1本につき最低でも2人の精神科医が評定、各精神科医はうつ病患者がパジャマ姿の動画と普段着の動画を半々でない割合で視聴(研究目的に気づかせないため)、患者1人につき視聴するビデオ映像は1種類という制約つき。

精神科医はこれまでの臨床経験に照らして、ビデオに写っている患者の重篤度を評定。その際に、臨床全般印象尺度(Clinical Global Impressions scale,CGI尺度)を使用。CGI尺度の評定に視覚アナログスケール(Visual Analogue Scale,VAS)を活用。精神科医には、研究目的がVASを使ったCGI尺度の改善にあると嘘をつきました(実験終了後に本当の目的を知らせました)。

「パジャマ効果」が精神科医の評定バイアスによるのか、それとも患者の気分への影響によるのかを明らかにするために、自記式のベック抑うつ尺度(Beck Depression Inventory,BDI)を使用。

その結果、普段着よりもパジャマ姿の方が、CGI得点が0.65ポイント(95%信頼区間:.27; 1.02)高くなりました。同様の結果は感度分析でも得られ、パジャマ姿の方が1.42ポイント(95%信頼区間:.52; 2.31)高くなりました。なお、CGI尺度は値が大きいほど臨床家が患者を重篤であると評価していることを意味します。評価者間信頼性としての級内相関係数は0.51でした。

1日目よりも5日目の方がCGI得点が0.66ポイント(95%信頼区間: −1.03; −0.29)低くなりました。ただし、感度分析では日にちの影響が検出されませんでした(p = 0.803,差は0.11ポイント,95%信頼区間: −0.78; 1.01)。

自記式のBDIでは普段着とパジャマ姿で有意差が検出されませんでした。1日目のBDI得点よりも5日目のBDI得点の方が低くなりました。このことから、パジャマで精神科医による患者の重症度評定が重篤になる現象は、患者自身の抑うつの変化が原因ではないと考えられます。

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posted by マーキュリー2世 at 21:54 | Comment(0) | 心理療法、臨床心理学、精神医学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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