2017年06月25日

ネット検索の訓練後に検索エンジンへの依存が強まる


インターネットでの検索訓練を6日間行った後に、新たな難問に直面した時にネット検索をしたいという衝動性が高まったという研究があります。また、ネット検索訓練後は新たな難問が出題された時に脳の衝動性制御に関わる部位の活動が増加したという結果も得られました。

Wang, Y., Wu, L., Luo, L., Zhang, Y., & Dong, G. (2017). Short-term Internet search using makes people rely on search engines when facing unknown issues. PLoS ONE, 12(4): e0176325. doi:10.1371/journal.pone.0176325.

中国金華市の浙江師範大学心理学脳科学研究所心理学研究室、北京師範大学認知神経科学&学習科学国家重点実験室(State Key Laboratory of Cognitive Neuroscience and Learning)・IDG/マクガバン脳研究所(IDG/McGovern Institute for Brain Research)、ドイツのコンスタンツ大学心理学研究室の研究者による論文です。

データ解析したのは、ネット検索を定期的に利用している31人の大学生から収集したデータ。女子大生が14人、男子大学生が17人、平均年齢20.5 ±1.1歳。
*ネット検索を定期的に利用しているかどうかはインターネット検索依存質問紙(Questionnaire on Internet Search Dependence,QISD)で調査。

実験課題は検索-記憶-想起再認(search-remember-recall and recognition)課題。まず、検索-記憶フェイズを実施。インターネットの検索エンジンを使って40種類の問題に回答。これらの問題の答えを1時間以内に覚えてからfMRI(機能的磁気共鳴画像法)スキャンを実施。メモを取るのは禁止。暗唱を防ぐため、検索-記憶後の待機時間は別のこと(99から4を順に引いていく計算や質問紙への回答)を実施。40種類の問題はほとんど誰も答えを知らないような難解なものばかりでした(もし事前に回答を知っていたらデータ解析から除外しました)。

fMRIでは想起再認課題を実施。想起再認フェイズでは、1試行につき、以前に呈示した40問の内1つを見せて、答えを覚えているか忘れたかの判断を求めました(想起)。次にスクリーン画面がブラックになり、その後に回答候補となる選択肢を呈示して、同じ問題に選択式で答えました(再認)。

fMRIでの実験の流れ:固視十字形(500 ms)→想起(制限時間は4,000 ms)→ブラックスクリーン(残りの制限時間+500〜 2,500 ms)→再認(制限時間は2,000 ms)→ブラックスクリーン(1,500〜3,500 ms)→次の試行(固視十字形)

fMRI実験では以前に検索エンジンを使って回答した問題とは別の問題10問をランダムに呈示しました。この新規問題は、以前にテストした40個の問題同様、ほとんど誰も答えを知らないような難解なものばかりで、ネット検索を使用する衝動を掻き立てるようにしました。

fMRIスキャンの後に、新規問題が出題された時にどれだけネットで検索する衝動性が生じたか質問しました。

実験参加者には協力謝礼金とともに、出来高報酬も与え、動機づけを喚起しました。出来高報酬は、想起時に覚えていると答え、再認時に正しい回答を選択できた分だけ獲得できました(正解1個につき1元)。しかし、想起時に覚えていると答え、再認時に間違った場合は1元の損失となりました。想起時に忘れたと答えると、金銭を獲得することも損失することもありませんでした。

検索-記憶-想起再認課題の他に、1日に1時間超のネット検索の訓練を6日間連続で行いました。訓練では、6つの検索課題を実施。1つの検索課題は80個の穴埋め問題で構成され、検索エンジンを使ってインターネットで答えを探すよう要求しました。この訓練でも正解率に応じて1日に最大20元の報奨金が与えられました。

検索-記憶-想起再認課題+fMRIはネット検索の訓練を6日間行う前と行った後の2回実施。2回の検索-記憶-想起再認課題は同じタイプでしたが、問題を変え反復効果の影響を排除しました。

実験の結果、ネット検索の訓練をする前と比較して訓練後は、新規問題が出題された時のネット検索衝動性が高まりました(d = 1.68)。

ネット検索の訓練をする前と比較して訓練後は、新規問題が出題された時の想起段階における左背外側前頭前野、右中心前回、右前帯状皮質の活動が高まり、右島皮質の活動が低下しました。

ネット検索訓練前と比較した、訓練後の新規問題が出題された時のネット検索衝動性の増加は、訓練前後の左背外側前頭前野の活動の増加(r = 0.493)や右前帯状皮質の活動の増加(r = 0.320)と正の相関関係にありました(ただし、右前帯状皮質はp = 0.105と有意な相関関係でありませんでした)。

本論文では、ネット検索訓練後の背外側前頭前野や前帯状皮質の活動増加を、これらの領域が衝動性の制御に関与していることとあわせて議論しています。すなわち、ネット検索訓練後は新しい難問にぶち当たった時に検索衝動性を制御しようと左背外側前頭前野や右前帯状皮質を活性化させたというわけです。ただ、ネット検索訓練後の左背外側前頭前野の活動の増加が、ネット検索衝動性の増加と正の相関関係を示したことから、背外側前頭前野の活動はインターネット使用動機づけを反映している可能性も指摘されています。

ネット検索訓練後の右島皮質の活動低下については現時点では解釈が難しいということで、論文では議論が尽くされていませんでした。

個人的に思ったことを書かせてもらうと、何の訓練も受けない統制群またはネット検索以外の訓練をするアクティブ統制群を設けていなかった点が実験デザイン上の問題です。したがって、本研究だけでは本当にネット検索の訓練効果だったのかが明確でありません。ただ、インターネットが脳や行動、認知、その他の心理機能に与える影響は重要な研究トピックであることは間違いありません。また、本実験(パラダイム)はインターネット依存症、インターネット中毒の原因解明、治療法、予防法の開発に役立つ可能性があります。

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posted by マーキュリー2世 at 22:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | インターネット心理学(SNS等を含む) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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