2017年06月19日

自傷の傷跡が持つ意味

自傷をしたことがある人は、その傷跡に深い意味づけを行っているという研究があります。

Stacy, S. E., Lear, M. K., & Pepper, C. M. (2017). The importance of origin: Differences in interpretation of self-inflicted versus environmentally-inflicted scars. Personality & Individual Differences, 116, 92-95. doi:10.1016/j.paid.2017.04.035.

アメリカのワイオミング大学心理学研究室の研究者3名による共著論文です。

非自殺自傷(nonsuicidal self-injury)という言葉があります。非自殺自傷とは、自殺意図のない自傷行為のことです。リストカットなどによる自傷は身体に傷跡を残し、自傷行為や情動的出来事を思い出させる手がかりとして機能すると考えられます。そこで本研究では、非自殺自傷による傷跡と他の傷跡とで傷跡関連の意味、行動に違いがあるかどうかを検証しました。

調査協力者は、非自殺自傷による傷跡がある人49名と、環境要因で傷跡ができた人54名。彼らの傷跡関連の解釈、行動、機能を比較しました。

その結果、環境的傷跡がある人達も非自殺自傷による傷跡がある人達も、多くの人が傷跡をアイデンティティーの一部として捉えていました。

環境的傷跡がある人達と比較して、非自殺自傷による傷跡がある人達は、傷跡に意味づけを行い、傷跡を恥のマーカー(印)と捉え、苦境を乗り越えたことを思い出す手がかりとして考えていました。

非自殺自傷による傷跡がある人達は、傷跡に注意を向けることが多く、傷跡を隠そうとし、精神的ストレスを感じると傷跡に注目しました。

自傷研究一覧
クリスマス、新年に自傷が減少する(例外あり)

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posted by マーキュリー2世 at 14:22 | Comment(3) | TrackBack(0) | 心理療法、臨床心理学、精神医学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
非自殺自傷を持つ心理学専攻の院生です。こうした研究は直接自身の研究とは関連しないのですが,どうしても気になってしまうのは,傷がアイデンティティになっているか,そうしたいという気持ちがあるのかもしれないと,この研究を見て納得しました。
Posted by at 2017年07月18日 16:38
コメント、ありがとうございます。

私は自傷をしたことがないので、その気持ちを十分に理解できているとは言えないかもしれませんが、この研究のように傷跡をアイデンティティに取り込んでおられる方もいらっしゃるのでしょうね。傷をアイデンティティにしている/したいと、現在の健康状態はどうか?や将来の健康がどうなりやすいのか?といった点が気になりますね。
Posted by マーキュリー2世 at 2017年07月18日 17:01
ご返信ありがとうございます。

傷の肯定的解釈が,Posttraumatic Growthのようなストレスイベントからの回復に関係しているのではないか,また認知的感情制御方略(e.g. 榊原, 2015)の大局的視点のような,適応的な情動制御につながるのではないか,それらの結果として健康状態にもポジティブに効いてくるのではないか,などと夢想します。とても気になりますね。日本ではこうした研究があるかどうか分からないのですが,倫理的・方法論的に難しいのでしょうか?
Posted by at 2017年07月19日 17:36
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