2016年12月18日

スパイシーな食物を食べるとリスク追及行動が強まる


人間(少なくとも中国の大学生)には、スパイシーな味が好きな人の性格に関してリスク追及特性が高く感じられ、スパイシーな味が好きな人は実際にリスク追及傾向が高く、スパイシーな味の食物を食べた後にリスク追及行動が強まるという研究があります。

Wang, X., Geng, L., Qin, J., & Yao, S. (2016). The potential relationship between spicy taste and risk seeking. Judgment & Decision Making, 11(6), 547-553.

中華人民共和国の南京大学心理学研究科の研究者による論文です。

〇研究1

実験参加者は南京大学の学生49人(女子大生28人)。平均年齢は21.36歳(SD = 2.14)で、範囲は18〜27歳。

参加者に顔写真とその人の味の好みに関する情報を1.5秒間対呈示し、顔写真に写っている人物の性格を判断してもらいました。

顔写真は白黒写真20枚(男女ともに10枚)ですべて無表情。好みの味は酸味、甘味、苦味、スパイシー(薬味・辛味)の4種類を使用。したがって、刺激の種類は顔写真20枚×味の好み4種類=80種類で、参加者全員がすべての顔写真と味の好みのペアを経験しました(被験者内実験計画)。

なお、用いたのは食べ物の好みではなく、味の好みに関する情報であることに注意が必要です。これは、食べ物の好みだと味の好み以外の要素が性格判断に影響する可能性を考慮してのことです。

参加者が判断する性格特性は短気・易刺激性(irritable)とリスク追及(risk seeking)。1〜7段階の7件法リッカート尺度。

研究の目的を察知した男性2人を除外してデータを解析しました。その結果、酸味、甘味、苦味が好みの人と比較して、スパイシー味が好みの人は短気・易刺激性やリスク追及が高く感じられました。

〇研究2

実験参加者は南京大学の学生113人(女子大生57人)。平均年齢は20.13歳(SD = .85)で、範囲は18〜23歳。

参加者は酸味、甘味、苦味、スパイシー味の好き嫌い度を1〜7段階の7件法で回答。その後、ドメイン特異的リスクテイキング尺度(Domain-Specific Risk-Taking Scale,DOSPERT)中国語版(DOSPERT-Chinese,DOSPERT-C)に回答。オリジナルのDOSPERTは6つのドメイン(投資・ギャンブル・健康/安全性、レクリエーション/休養/娯楽、社会的意思決定、倫理的意思決定)であえてリスクを冒す傾向を測る尺度でしたが、中国語版は社会的意思決定と投資を合算して、全部で5因子となっています。質問項目は35個で1〜7までの7件法で回答。

調査の結果、スパイシーな味が好きな人ほど、リスクテイキング傾向が高くなりました(r = .37, p < .01)。他の味の好みを統制した偏相関係数でも.37〜.38とほとんど変わりませんでした。回帰分析でも同様の結果でした(β = .37, p < .01, R2 = .18)。リスクテイキングをドメインごとに分析すると、健康分野では有意傾向であるものの(r = .17, p < .10)、その他はギャンブルでr = .24、レクリエーションでr = .29、倫理でr = .24、社会-投資でr = .25で、いずれも有意な相関関係となりました。

ちなみに、他の味に対する好みはいずれもリスクテイキング傾向と有意な関係とはなりませんでした(相関係数はそれぞれ、苦味がr = .13、甘味がr = -.12、酸味がr = .02)。

〇研究3

実験参加者は南京大学の学生51人(女子大生30人)。平均年齢は19.78歳(SD = .88)で、範囲は18〜21歳。2つの実験条件(スパイシー味・統制味)への割り当てはランダム(被験者間実験計画)で、スパイシー群が25人、統制群が26人。

DOSPERT-Cに回答後、スパイシー群は味のないパンにチリソースをつけたものを食べて、統制群はチリソースをつけない純粋な味気のないパンを食べました。

パンを食べた後、正負感情調査票(Positive and Negative Affect Schedule,PANAS)中国語版に回答しました。PANASでは、参加者に現在のポジティブ感情・ネガティブ感情の強さを1〜5段階で評価してもらいました。

PANASに回答後、アイオワ・ギャンブリング課題(Iowa Gambling Task,IGT)を実施しました。アイオワ・ギャンブリング課題とは、不確実さの下での意思決定を測る実験課題のことで、生態学的妥当性が高い検査手法です。本課題は4種類のカードの山(A・B・C・D)を用いるのが定石です。カードには獲得金額が記載されており、カード選択でできるだけ多くの金額を入手するよう教示しました。選択するカードの山がAやBだと100ドル獲得し、CやDだと50ドル獲得しました。これだけだと、ずっとAやBを選んでおけばいいじゃないかとなりますが、10枚ごとに損失が生じました。この損失金額はAやBで大きく、CやDでは小さいように設定しました。したがって、短期的にはAやBを選択した方が有利ですが、長期的にはCやDを選んだ方が獲得金額が高くなる仕組みでした(いつ損失が発生するかは参加者には予想できません)。この実験課題の特性から、本研究ではAやBの選択をリスク追及行動、CやDの選択をリスク嫌悪行動と解釈しました。AやBの選択はいつ発生するか分からない多額の損失というリスクを負っても短期的に多額の報酬を求める方略、CやDの選択は、短期的な報酬額を犠牲にして損失額(=リスク)を最小限にする方略といえます。

アイオワ・ギャンブリング課題は2,000ドルのローンからスタートし、全部で50試行実施しました。

パンを食べる前に回答したリスク追及傾向やパンを食べた後のポジティブ感情・ネガティブ感情には、スパイシー群と統制群で有意差が検出されませんでした。一方、アイオワ・ギャンブリング課題では統制群よりもスパイシー群の方がリスク追及選択が多くなりました。

ただ、質問紙、DOSPERT-Cでのリスク追及傾向とアイオワ・ギャンブリング課題でのリスク追及行動との相関係数はr =.06と小さく、有意でもありませんでした。

性格と味の好みの関係に関する研究記事⇒苦いものが好きな人はサディズムやサイコパシーが高い
そういえば、感謝すると甘いお菓子を食べる量や選択する量が増える(Schlosser, 2015)という研究もありましたね。

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posted by マーキュリー2世 at 21:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 認知心理学、認知神経科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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