2016年05月09日

あくびの伝染は他者の存在/監視下で抑制される

あくびの伝染は、他者がその場にいたり、ウェブカメラで被験者の様子を記録している(と信じ込ませている)と抑制されるという研究があります。

Gallup, A., Church, A. M., Miller, H., Risko, E. F., & Kingstone, A. (2016). Social Presence Diminishes Contagious Yawning in the Laboratory. Scientific Reports, 6:25045. doi:10.1038/srep25045.

アメリカ合衆国ニューヨーク州立大学オネオンタ校心理学教室、カナダオンタリオ州のウォータールー大学心理学教室、カナダのブリティッシュコロンビア大学バンクーバーキャンパス心理学教室の研究者による論文です。

実験参加者は105人(女性79人)。平均年齢は19.12±4.54歳。

参加者にはコンピュータのモニター画面に移したビデオ(170秒)を見てもらいました。ビデオ映像で7秒間のビデオクリップをランダムに連続して表示しました。このビデオクリップには3種類あり、それぞれあくびをしている人、笑っている人、無表情の人が映っていました。先行研究によれば、この実験手続きであくびの伝染が約50%の人で生じたそうです。また、自発的あくびは稀な現象であることが先行研究で報告されていますから、実験中のあくびのほとんどは伝染物であろうと推測できるわけです。

実験参加者は以下の5つの条件のいずれかに割り当てられました。
・部屋に独りだけ(統制群)。
・独りだけだが、モニター上部に人間の目の写真が貼ってある。
・独りだけだが、モニター上部にウェブカメラ、webcamを設置。webcamは起動していない(ことが被験者にも分かっている)。
・独りだけだが、モニター上部にwebcamを設置。webcamは起動しており、実験参加者の様子を記録していると教示(実際には記録していない)。
・後ろにいる研究者が参加者の方を向いて座っている。

ビデオ観賞後、年齢や昨晩の睡眠時間、実験中にあくびをしたか、あくび欲求が生じたか質問。あくびの報告は自己申告ですが、先行研究によると、自己申告とビデオで撮影した実際のあくび行動との間には高い一致が認められていました。

その結果、実験中にあくびをしたのは105人中36人(34.3%)でした(性差は検出されず)。

一番あくびが多かったのは部屋に一人だけでいる統制群で57%の人があくびをしました。その次が、モニターに人間の目の写真が貼ってある群と起動していないwebcam群で両方とも42.9%でした。研究者がいる群ではあくび率が19.0%、webcamが起動していると信じさせた群では9.5%でした。統計学的には、統制群と比較すると、研究者存在群やwebcam「起動」群であくびをした人の割合が有意に少なくなりました。目の写真が貼ってある群や起動していないwebcam群と比較しても、webcam「起動」群は有意にあくびをした人の割合が低くなりました。

被験者1人あたりの平均あくび回数は、統制群や目の写真が貼ってある群、起動していないwebcam群と比較して、webcam「起動」群で有意に少なくなりました。また、統制群と比較して、研究者存在群であくび回数が少なくなりました。

あくび欲求を感じた人の割合は研究者存在群で66.7%、webcam「起動」群で55.0%、目の写真群で38.1%、統制群で33.3%、未起動webcam群で23.8%でした。統計学的には、未起動webcam群と研究者存在群の差のみ有意でした。なお、ここでのあくび欲求とは実際にあくびをしなかった場合の欲求だけを計上したもののことです。

実験時間帯や年齢、前夜の睡眠時間は実験中のあくびやあくび欲求を予測しませんでした。

以上の結果から、あくびが少なくなるのはwebcamで被験者の様子を記録していると信じさせた時に顕著で、研究者が被験者の後ろに座っている時でもあくびが少なくなったと言えます。目の写真の効果は検出されなかったものの、このことは他者の存在や電子機器による監視があくびの伝染を抑制することを示唆します。

また、あくび欲求は研究者存在群で66.7%と最大で、次がwebcamが起動していると信じさせた群の55.0%で、統制群との比較検定は有意でなかったものの、他の群と比較すると多い傾向にありました(主観的判断)。ひょっとすると、監視下ではあくびしたいけどできない/しない状態に置かれているのかもしれません(こんなことを書くと何のために統計的検定をやっているのだ!と怒られそうですが、有意差検定だけがすべてじゃありませんしね)。

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posted by マーキュリー2世 at 20:31 | Comment(2) | TrackBack(0) | 社会心理学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Posted by 記事と関係ないですが at 2016年05月17日 22:55
記事と関係ないですがさん、情報ありがとうございます。この研究、面白いですよね。どのような理論的背景があるのか知りませんが。
Posted by マーキュリー2世 at 2016年05月17日 23:31
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