2016年03月20日

セラピストはメタファーを多用する

うつ病の認知行動療法セッションでクライエントよりもセラピストの方がメタファーを多用するという研究があります。メタファーは日本語にすると暗喩(隠喩)ですが、本研究では直喩(明喩)もメタファーに含まれているのでご注意ください。

Mathieson, F., Jordan, J., Carter, J. D., & Stubbe, M. (2016). Nailing down metaphors in CBT: definition, identification and frequency. Behavioural & Cognitive Psychotherapy, 44(2), 236-248. doi:10.1017/S1352465815000156.

ニュージーランドのオタゴ大学ウェリントン/クライストチャーチキャンパス、カンタベリー大学の研究者らによる論文です。

うつ病の心理療法(50分間の認知行動療法セッション)のトランスクリプト48本をデータ解析しました。セラピストは3名、クライエントは12名(女性75%,平均年齢38.3歳,範囲26〜56歳)でした。データ解析した認知行動療法セッションは1〜4なので、全セッション数は12×4=48。

メタファーの同定のために談話力学アプローチ(Discourse Dynamics Approach:DDA)を使用。談話力学で研究者が地道にメタファー単語やメタファーフレーズを見つけていきました。私は談話力学について詳しく知りませんが、論文を読む限りでは、臨床心理士と言語学者が議論を重ねてメタファーの定義等に関する共通理解を形成したようです。主なコーディングは臨床心理士が実施した模様。臨床心理士と言語学者の評定者間信頼性は70.2%(同じ表現をメタファーだと同定する確率)。

なお、本研究における談話力学でいうところのメタファーとは「椅子の脚」など現代ではメタファーとは言えないようなものも含まれています。これは時代とともにメタファーが慣例的表現となって、隠喩の意味合いが消失していくからです。したがって、本論文でいうところのメタファーは思ったよりも範囲が広いことに注意が必要です。また、"like(〜のような)"などの直喩(similes)もメタファーに含めていることにも注意が要ります。

トランスクリプトを解析した結果、セラピーセッション中の1000語あたりのメタファー使用頻度は31.5回(範囲17〜49回)でした。

クライエントよりもセラピストの方がメタファーを2倍多く使用していました(有意差も検出されています)。具体的には、1000語あたりでクライエントがメタファーを使ったのは10.3回(範囲:3〜24回)だったのに対し、セラピストは21.2回(範囲:7〜36回)使用していました。クライエントよりセラピストの方がメタファーを使ったのは全48セッション中、46セッションでした。4セッションを合算すると、セラピストよりメタファーを使用することが多かったクライエントはいませんでした。

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posted by マーキュリー2世 at 22:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 心理療法、臨床心理学、精神医学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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