2015年10月03日

透明人間の錯覚で痛覚感受性が高まる

バーチャルリアリティー(仮想現実)技術で透明人間になり、その透明身体を所有している感覚が高いほど痛みに敏感になるという研究が発表されました。

Martini, M., Kilteni, K., Maselli, A., & Sanchez-Vives, M. V. (2015). The body fades away: investigating the effects of transparency of an embodied virtual body on pain threshold and body ownership. Scientific Reports, 5:13948. doi:10.1038/srep13948.

イギリスのイースト・ロンドン大学心理学部、スウェーデン(ストックホルム)のカロリンスカ研究所神経科学研究科脳、身体、自己ラボ(実験室)、イタリア(ローマ)のサンタ・ルチア財団神経運動生理学ラボ、スペイン(バルセロナ)のIDIBAPS(Institut d’Investigacions Biomèdiques August Pi i Sunyer)、ICREA(Institució Catalana Recerca i Estudis Avançats)、バルセロナ大学心理学研究科イベントラボ&基礎心理学研究科の研究者達による論文です。

右利きの女性24名が参加(平均年齢21歳)。

バーチャルリアリティーシステムにヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使用。バーチャルボディ(仮想身体)は透明性を0%、25%、50%、75%の4段階に設定可能で、全ての実験参加者が4段階を経験(被験者内実験計画)。第一人称視点の身体所有感錯覚の誘発を目指す。

痛覚閾値の計測は熱刺激を右前腕に与えて実施(極限法)。皮膚温度のベースライン、31 °Cから刺激熱の温度を上昇させていき、被験者が痛いと思ったところでボタンを押してもらい、また刺激熱が元のベースラインの温度に戻る。刺激間間隔は40秒。

バーチャルな右腕の所有感錯覚の強さは熱刺激の終了後に報告を求めました。

実験の結果、仮想身体の透明度が高いほど身体所有感が低くなりました(スピアマンの相関係数:−0.32)。順序ロジスティック回帰分析でも透明レベルが身体所有感を予測しました。身体所有感が強かった順番に並べると以下の通りです。

透明度:0%・25%>25%・50%>75%

身体透明度によって痛覚閾値が有意に異なることはなく、身体透明度と痛覚閾値に有意な相関関係もありませんでした。しかし、身体所有感と痛覚閾値に負の相関関係がありました(スピアマンの相関係数rs:−0.27)。言い換えると、身体所有感が強いほど痛覚刺激に敏感になったということです。ただし、まったく透明でない0%条件では相関係数がrs = −0.1(p = 0.46)でした。一方、透明度が25%ではrs = −0.42(p = 0.04)でした。透明度50%では有意傾向で(p = 0.064)、rs = −0.39でした。透明度75%では全く有意でないものの(p = 0.152)、rs = −0.30でした。

関連記事⇒フロイトの身体になって自己カウンセリング→気分上々↑↑(身体所有感錯覚の実験)

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posted by マーキュリー2世 at 18:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 身体心理学(身体錯覚を含む) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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